こじつけは日本メディアの専売特許ではない

infected by misunderstanding by Will Lion, on Flickr
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前回紹介した、ジョナサン・アイブのインタビューにちなんでもう1本。

「最高傑作はなんですか?」という質問に対して、アイブが「今やっていることが常に最高傑作だと考えているよ」と、禅問答をやる箇所があります。

If he was to be remembered for just one of his Apple designs, I ask, which one would he pick?

There is the long pause. “It’s a really tough one. A lot does seem to come back to the fact that what we’re working on now feels like the most important and the best work we’ve done, and so it would be what we’re working on right now, which of course I can’t tell you about.”

「アイブはこれをデザインしたんだ、と一つだけ覚えてもらえるとしたら、どの製品になりますか?」

長い沈黙が続いた。「難しいね。結局、現在手がけているものが、最高傑作で、最も重要な仕事だと常に感じているんだよ。だから今とりかかっている仕事ということになるかな。何かは言えないけど」

この発言を受けて「今手がけている=Apple TV (またはiPhone 5) のはずだ=次期xxxxxは彼の最高傑作になるかも!」と英語メディアが騒ぐこと騒ぐこと。

CNET:

Speculation abounds over what Ive might have been talking about. Is it the long-rumored iPhone 5, which according to the latest reports, comes with a taller display and a few design improvements to differentiate it from its predecessor, the iPhone 4S? Or is it the highly sought-after Apple television — the device that Steve Jobs said last year, he had finally “cracked” the code on?

アイブが一体何を指しているのか、想像がつきない。長い間噂されたiPhone 5だろうか?最新の報告によると、先代のiPhone 4Sよりディスプレイが長くなってデザインが改良されているとのことだ。あるいは期待が高まっているApple テレビースティーブ・ジョブスが昨年、ついに「突破口を開いた」と発言した製品ーだろうか?

こじつけは日本メディアの専売特許ではないな、と感じます。期待値が大き過ぎるから、たとえわかっていてもみんなこじつけてしまうのでしょうけど。記事を書く前に、ある事件に対する態度を決めてしまい、それそった内容で仕上げるのは日本だろうが外国だろうが関係なく、人間の本性だと思います。要は、それが起こった際にチェックできるかどうかなのかもしれません。

英文記事の場合は、(1)記者の名前が乗っていることがほとんど(2)記者の転職が頻繁におこるのが特徴です。なので、根拠の無い記事を書くとそれが汚点となり後々まで響くし、良質な記事を書けばそれが履歴書になります。自然と、根拠の無い記事を書こうという態度は減るのではないでしょうか。むろん、上記の例にあるように、なくなるわけではないのですけど。

また、日本企業を英語メディアがインタビューする際、通訳の行き違いから事実に反した記事が流れてしまい、それが噂を超えて事実ととらえられる、ということも起こります。日本企業(個人も)は自らメディアに対抗して発信するという習慣がないので、対応が遅れるか、ないままになることもあります。これについてはまた別の機会に例を見てみます。