「動員の革命」を動員してみた

先日の津田大介氏の「情報の革命」に続いて、最新刊である「動員の革命」も買ってみたので読みました。情報の革命で得られたような「ああ、ソーシャルメディアってこうなんだ」という洞察はあまり得られませんでした。ですが、これは僕が「情報の革命」に引きずられ、本書にも同じ期待を(そして見当違いの期待を)抱いてしまったからです。読み続けているうちに、本書がうまく体に浸透してきました。

この本は、「記録」だと思います。大震災から今までにいたる経過の中で、津田氏がソーシャルメディアを駆使していったいどのようなことを行ってきたのか、得られた効果はなんだったのか、その過程を見せてくれる本です。過程を可視化することは、実はソーシャルメディアの機能であると著者が文中で述べています。

ソーシャルメディアは一個一個の発信を細切れにせざるを得ません。一度に書き込める上限の文字数は、ツイッターが所詮140字、フェイスブックでも約600字ほどです。ブログを書くときのように起承転結という「正しい順序」が存在せず、完成系に向かうプロセスが細分化されます。前述したように、ブログは多くの情報をまとめて貯蔵するストック型ですが、ソーシャルメディアは一つ一つのパーツを積み上げていくフロー型なのです。むしろ、完成までどのような変遷をたどったのかを見せるのがソーシャルメディアなのです。

なのでこの本は「ソーシャルメディアを駆使して社会と関わるとはどういうことか」を体現した存在なのかな、と考えています。この本から読み取るべきなのは知識や知恵ではなく、行動を起こすこととはどういうことなのか、という汗のにおいがする具体例でしょう。

ソーシャルメディアとはなんぞや、という謎解き本を期待すると肩すかしをくらいます(くらいました)。でも、もし僕が実際にソーシャルメディアを使って大きな仕事を行おう、とするときにはこの本を読み返すでしょう。100の理論より、1の実例です。前回紹介した「情報の呼吸法」がマニュアルのように「読み終わったら本は横において、実際にツイッターをやりましょう」と促してくれるとしたら、今回の「動員の革命」は「ツイッターをやりながら横において、時々読み返してみましょう」といった存在です。

なので、パソコンの脇に常備しておくとよさげです。その意味では、電子書籍にとっても向いている本かもしれませんね。と、海外組としてますます「電子書籍が当たり前」の世界が到来することを楽しみにしています。