灰色な世界で白を叫ぶ

少し前の話ですが、バットマンの最新作の上映初日に、映画館で銃が乱射されて数十人の人が命を落としたり、けがを負いました。こういう事件が起こるたびに、「銃をなくせ」「いや、必要だ」という議論が起こります。

僕の感想では、必要なのは「銃を撤廃すること」ではなく、「簡単に銃を手に入れられなくすること」なのではと思います。銃を持つのは自衛の権利を保つためだ、というのは理屈ではわかります。しかしそれが「簡単に機関銃を数丁購入できる」現実に飛躍しているのが悲劇なのではないでしょうか。自動小銃(アサルトライフル)はassault=攻撃の名の通り、自ら殺傷するための道具です。自衛のため、ならばなぜ攻撃に特化した道具が簡単に手に入るのでしょうか。

原発撤廃にしろ銃規制にしろ、「なくせ」「いや存続だ」の二者択一に話がずれてしまうのが、いつももどかしく思います。中国とのいざこざについても同様です。世の中、二元論でけりがつくような単純な問題はどんどん減っていき、全てが混沌とした灰色の中にいるような感じがします。濃淡はあれど、どこまでいっても真っ白にならないこのもどかしさ。だからこそみんな、「白」を求めて世界を二種類にぶったぎろうとする。あたかも、どうにもしみがとれない自分の人生を他の何かできれいにするかのように。

ゲイ(レズ)の友人と、このことについて語ったことがあります。彼女は20代の前半まで普通にボーイフレンドを作って生きていましたが、あるときに女友達に誘われ、それ以来「目が覚めて」今にいたっています。「世の中には完全なゲイもストレートもいやしない」が僕らの一致した見解です。全ての人間はバイセクシャルであり、どちらの性向がどれだけ強いか、だけなのだと。僕らが住む世界には「100%」などありえないのだ、と受け入れて生きる彼女からは、抜けるような開放感がにじみ出ます。(余談ですが、彼女の故郷である南アフリカは西欧社会ですが宗教の力が強く、台湾ではのびのびとできているようです。アジアは伝統にしばられ、西洋は寛容だ、のステレオタイプが通用しない一例ですね)

戻って、世界を縦割りでなく、刻々と変化するグラデーションでとらえ、自分もまた常に変化し続ける存在なのだ、と受け入れて生きていたい、と思います。その意味で、白か黒か、と問い詰める議論は、たとえどんなに正しそうに見えても、最初から破綻しているのではないか、と感じています。この灰色観には、良い点もあります。完璧な白がないということは、完璧な黒もない、ということです。いつも不安が残る、ということはいつも希望が存在する、ということと同じなんだ、と考えると(実際、自分の経験から言ってもこれは正しいです)、少し肩の力が抜けます。

追記:銃規制について、クリス・ロックのコントは面白いながら、一理あります。

You don’t need no gun control.
You know what you need?
We need some bullet control.
Man, we need to control the bullets, that’s right.
l think all bullets should cost $5000.
$5000 for a bullet. You know why?
‘Cause if a bullet costs $5000 there’d be no more innocent bystanders.
That’d be it.
Every time someone gets shot, people will be like, ”Damn, he must have did something.
”Shit, they put $5000 worth of bullets in his ass.”
People would think before they killed somebody, if a bullet cost $5000.
”Man, l would blow your fucking head off, if l could afford it.
”l’m gonna get me another job, l’m gonna start saving some money…
”and you’re a dead man. ”You better hope l can’t get no bullets on layaway.”
So even if you get shot by a stray bullet… you won’t have to go to no doctor to get it taken out.
Whoever shot you would take their bullet back.
”l believe you got my property.”

概要を日本語訳にすると、こんな感じです。

銃規制なんかいらねえよ。いるのは弾規制だ。弾一発につき5000ドルにすりゃいいんだ。無関係な人間が撃たれることはなくなるぜ。誰か撃たれるたびに、「よほどのことしたんだろ」「ケツに5000ドル分も弾をぶち込まれたそうだ」って皆うわさするぜ。弾に5000ドルかかるなら、分けも無く撃つ奴はいなくなるな。「金さえありゃおまえの頭を吹き飛ばしてやる」「仕事を見つけて金を貯めるからな。そうすりゃお前をぶち殺せる」てな。運悪く流れ弾に当たっても、医者に見てもらわずにすむからぜ。撃った奴が弾を取り返しにくるからな。「俺の持ち物を返せ」てな。