一週間ほど台湾南部の都市、その名も台南市に滞在していました。端から端まで自転車で30分ほどで横断できる、コンパクトな街です。昔ながらのお寺や商店街に加え、近代的なビルやデパートも建ち、小ぎれいな喫茶店やギャラリーなどもそこかしこにある、バランスが整った場所でした。東京から福岡に行くと感じる「小振りなちょうどよさ」と同じ感覚です。
台北との最大の違いは都市の構造や規模ではなく、人の有り様です。とにかく皆、のんびりしてリラックスしているのです。歩くスピードが違いますし、人と人との距離感も違います。切羽詰まった表情をしている人もあまり見かけません。台南の友人(非アジア人)は「台北に行くと、着いた瞬間に息が詰まるの」と言っていましたが、その感じを僕も帰りの便で体験しました。東京から台北に移動した際に、のんびりしていていいなあ、と感じたくらいなので、台南ののんびり加減は日本で言えば沖縄の雰囲気に近いと思います。
数日滞在しただけで、「ここに住めたらいいのになあ」と自然に思えてきました。台北という大都市(といっても日本で言えば名古屋くらいの大きさ)に住んでいると、ただ「いる」だけで体がストレスを感じている、という事実に気がつきません。台南には雄大な自然も、くつろげるカフェも、気持ちいい公園がありますが、台北にもあります。それら特定の場所ではなく、「空気」にリラックスが含まれているのが決定的な違いに思えました。
これまでなら、「住みたいなあ」の次に「でも仕事が無い」と、一秒程度で理想の生活図は打ち砕かれていました。でも、もしネット経由での仕事が進み、住む場所を自由に選べるようになれば、仕事先に合わせて住処を選ぶ制限はなくなります。同じことを考えているのは僕だけではないはずです。
もはや大都会以外は死ぬだけか、と僕は最近まで思っていましたが、近い将来、「地方都市」は復活すると半ば確信しました。リラックスは地方では空気に含まれていますが、大都市では金を払って得るものです。(ストレスをためて金を稼ぎ、ストレスを発散するために金を払う、永久機関のようなものかもしれません。)「田舎」が復活するかどうかはわかりませんが、少なくとも僕にとって、収入源さえ確保できれば地方都市へ移動、というのはかなりの確率で起こると考えています。