「情報の呼吸法」を吸ってみた

ツイッターをやっていると、いやでも視界に入ってくる有名人、が何人かいます。皆がリツイートする人ですね。津田大介さんもその一人で、震災以来彼のツイートが回ってこない日が無いくらいです。常に情報の震源地にいつづける津田大介氏とは何者なのか、興味を持ってメルマガを読み、本を購入してみました。気に入った一冊を紹介します。

情報の呼吸法」はソーシャルメディアとはいったいなんなのか、を分からせてくれる書物です。ツイッターやフェースブックを知らない人(例えば自分の親とか)に説明しようとして、もどかしい思いをしたことはありませんか?まあ、自分自身が理解しきれていないのが一番大きな原因なのですが、そんな時にこの本があれば、たった2時間ほどで概念を他人にも、自分にも、分からせてくれる、そんな本です。

ツイッターにしろフェースブックにしろ、僕らは飛び込んでから泳ぎ方を覚えてきました。それができることがソーシャルメディアが大成功した大きな理由なのですが、同時に一体自分のやっていることが何なのか、考える間も無いのも事実です。そういうときに、こういった書物があれば後追い的に、自分の立ち位置を俯瞰できます。(なので、本を読む前にとりあえずツイッターやってみろ、と今でも僕は思います)

この本は「正解」を与える本ではありません。そんなものはないでしょう。ただし、「気づき」をたくさん与えてくれます。まさにツイッターのように、自分が意識していなかった領域にヒントを投げてくれ、良質のマッサージのように自分の考えをもんでくれる、そんな本です。読んだ結果、「ツイッターとはこうだ」が解説できるようになるのではなく、「自分はこうやってツイッターを使おう」がじわじわとわかってくる、そんな体験ができます。

ツイッター作法については渡辺由佳里さんの名著「ゆるく、自由に、そして有意義にーストレスフリーツイッター術」があります。こちらがツイッターの「どうやって」を解き明かす本なら、「情報の呼吸法」はツイッターの「なぜ」がわかる、そんな感じでしょうか。どちらもおすすめです。

以下、気にいった箇所を引用します。

「仕事じゃないのに」と思われるかもしれませんが、仕事ではないから逆にこういうことを純粋にやれたのだと思っています。東京で働いている普通の人であれば、地震の3日後や1週間後には日常的な仕事に戻っていかざるを得ませんが、僕はフリーです。だから、震災・原発情報を流すことに24時間ずっと、労力を100%注ぎ込むことができました。むしろ、こういうときに力を注ぎ込むために今までフリーでやっていたんだと思ったほどです。

 

僕は自分が抱えている問題意識を他者と共有し、人々が「この状況を変えていこう」と動いてくれれば、それでいいのです。「情報とは何か?」と問われたら、僕は「人々が動き出すきっかけを与えるもの」「人をドライブさせるためのガソリン」と答えます。その先に行動や変化があることが大前提です。

 

ソーシャルメディアの場合、情報ではなく人をフォローするので誤配が平気でたくさん起こります。極端な話、ブロックしている、あるいは嫌いだからフォローしないという人のツイートも公式リツイートで入ってきたりします。自分の考えとは違う意見や他の視点が入ってくるのが避けられない構造になっている。しかしそれこそが面白いし、そこに新しい情報への入り口があるわけです。

 

そもそも「自分の考え」なんて結局はよく分かってない人のほうが多いわけです。なんとなくこれには違和感がある、なんとなくこれは好きだなあという漠然とした感情を持っていて、それをツイートしてそれに誰かが反応してくれるのを見て、「ああ自分はこういうことを考えていたのか」と初めて気づく。自分と違う人、似た人の考えに触れることで、「自分の考え」の輪郭が浮かび上がる。それもツイッターの面白さです。そのためには、ある程度多角的に人をフォローしたほうがいいんです。

 

人間は、「物事が動き出す瞬間に居合わせる」ことにものすごく興奮する生き物なんだと思います。これはずっとソーシャルメディアを見ていて自分が気づいたことでもあります。いまこの場所に自分はいる、いまこのイベントに自分はいる、いまこのスタンドに自分はいる・・・・・・。いましかあり得ない「伝説」がここで作られようとしている、その瞬間に立ち会うことに興奮するのです。