Lost in Shibuya

渋谷にて。

Dsc02762

Dsc02763

渋谷の人ごみにまみれていると、ふと黒い妄想をいだくことがあった。特に雨が降っている時に。

携帯電話で商談らしきものをしながら歩く中年のサラリーマン:しかし携帯のストラップにはふさふさとした毛皮?がぶらさがっている。ぱりっと黒服を着こなし、口ひげなどを蓄えて雑誌でそのままモデルになりそうな若い男性が、通り過ぎる女性に手当たりしだい声をかけていたりする。交番のど真ん前でやっている。外国から来た、と思わしき人間たちの目つきがどうも不遜だ。トカレフやらジャックナイフやらが出てこないかな、と期待して眺められるほど、それっぽい人々だ。地方から来た中学生と思われる女の子が4-5人で固まってなにやら相談事をしている。それらがごちゃまぜになり、排他するわけでもなく調和するわけでもなく同居している。何かが変だ、変なはずなんだけどその場にいれば普通に過ごせる。

この瞬間に空からミサイルが落ちてきて、渋谷の町が木っ端微塵になったとして果たしてそれは日本全体からどれほどの貴重な人材を奪っていくのだろうか?巻き込んだ人間の量に反比例して、効果は薄いのではないのか?てなことを考えたりする。

すごく微妙なバランスの上に立っているあの感じは、安定しているわけではないという意味で日本や海外の地方都市とは違う。また、ある方向へどんどん向かっているわけではないという意味で上海や北京のような中国の近代都市とも違う。どちらへ向かっているわけでもない、かといって落ち着いたわけでもない、すごく熱気があるわけでもない、ルールがあるようでいて無い、個々の要素がつながっているようでそうでもない、宙ぶらりんな街が渋谷だ。

だから現実から切り離された感覚が欲しいとき、宙ぶらりんになって少し不安定になりたいとき、渋谷に行くと心休まり、かえって妄想が解き放たれることになる。それはそれで悪くないのでは。