イスラエルの航空会社、EL ALを使ってバンコク-テルアビブの路線を飛んだことがあった。
イスラエルからアジア、またはその逆へアクセスする時は、北周り(ロシア上空を飛ぶ)と南回り(中東諸国の上を飛ぶ)の2種類がある。
日本から飛ぶときは大抵ヨーロッパの航空会社を使って、北周りのルートを飛ぶ。いったんイタリアやらイギリスやらドイツやらへ飛んで、そこからイスラエルへ飛ぶ。
しかしイスラエルから来る同僚たちはみな好んで南回りのルートを使う。香港か、バンコクを経由して日本へ来る。理由は少なくとも二つある。ひとつはEL ALが飛んでいること、もうひとつは香港でデジタルカメラやら携帯やらの買い物ができること。イスラエルの飛行機がアラブ諸国の上を飛んだら冗談抜きで撃墜される恐れがあるので、EL ALの飛行機は紅海近辺の国境線の上を綱渡りするように飛ぶ。飛行ルート(芸術的に国境線沿いをなぞる)に見入ってしまったのは他ではありえないだろう。
日本へはEL ALは直通便が無いのだが東京に営業所はある。どこぞのアパート郡の一角にひっそりと8畳一間くらいの事務所がある。イスラエルから来た同僚がチケットの変更を行う必要があったため、急遽お邪魔したことがある。彼らが自力では決して探し出せないであろう場所まで、川や公園やらを眺めながら行った。受付の女性はとても喜び(その月ではじめての客だったのだろう、と僕らは結論付けた)、追加料金50ドルね、とまたにこやかに通達した。
また、EL ALは世界一安全な航空会社である、というのは本当らしい。曰く
・誘導ミサイルを撹乱する装置が付いている
・911が起こる前から、操縦席には立ち入り禁止になっていた
・覆面の軍人が必ず2名は乗客に混じっている
・結果として一度もハイジャックされたことはない
安全な理由は乗る前にもわかる。チェックイン後の身体検査には:一人当たり:最低20分かかる。人が列を成すので、全部で2-3時間かかる。スーツケースの中、パソコンのソフト、背広、靴、ベルト、金属探知機を持ったお兄さんお姉さんたちが歩き回る。一度靴の中に爆弾を仕込んで飛行機に乗ったか乗ろうとしたかした奴がいるらしく(しかもそいつが日本人だったらしく)、こちらが脱いだ靴に顔を近づけてなにやら検査する。心の中だけじゃなく、思わず’I’m sorry’とつぶやいた。フェチにはたまらないシチュエーションなのだが。
飛行機が滑走路に着陸すると乗客が拍手喝さいするのもこの航空会社の特徴だ。口笛を鳴らす人間もいる。食事がいまいちなのが欠点らしき欠点だ。