トム・クルーズについて考えることが時々ある。
完璧主義だとか、あの笑顔で食っているとか、実は背が低いとか、そういうことではなくて(そういうときもあるけど)、彼の映画でなぜ脇役が光るのかについてだ。
彼の映画ではほぼ必ず彼一人が主役だ。他の人と主役を分け合うということがない。100億円かけて作る映画で、毎回そんなことが許される俳優は現在何人いるのだろう。メル・ギブソン、トム・ハンクスぐらいかな。ブラッド・ピットだって大作の「トロイ」に出てるけどあれにはオーランド・ブルーム+エリック・バナという保険がかけてあるし。
要するに毎回、彼を中心に映画が作られる。それにも関わらず、トム・クルーズの映画といえば次世代のスターたちが脇役としてブレイクする場所、としての印象が濃い。
Interview with the Vampireではブラッド・ピットが、
Jerry Maguireではレネー・ゼルヴィガーとキューバ・グッディング・Jrが、
Minority Reportではコリン・ファレルが、
The Last Samuraiでは渡辺謙が主役以上に注目を浴びてきた。
そういえばジョン・ボイトもMission Impossibleで久々に大作に出てから復活した。
じゃあトム・クルーズは存在が薄いのかといえばとんでもなく、上にあげたどれでもやっぱり彼の映画に仕上がっている。Interview with the Vampireだけはブラッド・ピットの映画、と言ったほうが正しいけど。監督の好みだろう。
彼は脇役に頼る必要はない。しかも絶大な権力をもっている。例えばThe Last Samuraiは
・日本が舞台
・しかも時代劇
・しかもトム以外だれも有名スターがいない
と、制作費に100億円かける理由はトム・クルーズ以外見当たらない。日本での興行収入は相当見込めるだろうけど、本国アメリカで惨敗するかしないかはトム一人の肩にかかっているはずだ。(結局アメリカ国内で100億円以上の売り上げはあった。きっちり結果を残したので誰も何も言えないはずだ)
だから仮に撮影中に渡辺謙がすごい演技をしても、トムが「このままでは食われる」と思ったら渡辺謙の出演時間を強引に減らすことだってできる。プロデューサーも務めているし。
誰だって寛大なふりをすることはできる。でも彼のように、映画評で「トム・クルーズよりもXXXが光った」と書かれて、平然とそれを流して、かつそれを何回も繰り返しているスターを僕は他に知らない。で、今になっても彼は過去のどの脇役よりも強い主役として生き残っている。
彼は「いい映画を作る」を常に最優先にしているのではないのだろうか。何がいいか悪いかは色々意見があるだろうけど、少なくとも自分を露出することを常に念頭に置いているわけではなさそうだ。映画をよりよいものにするのであれば、他の人間がとんでもない才能を見せてもOKなのだろう。
毎回、彼の映画をつい見てしまうのは次のブレイクを発見する楽しみがあるからだろうか、と思った。