頭がさえていろいろなことをすらすらと片付けるときと、何も考えられなくなってしまうときが一日の中で両方起こる。
以前はどちらかだけ、ということが2-3日続いたことがあったが、最近はサイクル(周期)が短くなって、だいたい2-3時間で調子よい、悪いの波がやってくる。
その小さな波は、基本的な調子、という大きい土台の上でうねっている。この土台はうねりはしないけど、上下はする。
(上、がよくて下、があまりよくない)
何も考えられなくなる状態を、以前は「スピードが落ちた」と捉えていた。遅いんだから、なんとかして早くしてやろうといろいろな刺激を加えてみたりした。食べる、運動する、などとにかく体と心を活性化させるものならなんでも知っているものを試した。
でも最近になって、「遅い」というのは違うのではないか、と考えはじめた。遅いのではなく、他のことにエネルギーをとられているのだ。そしてその他ごとが何なのかよくわかっていないから、あるいは他ごとの存在にすら気づいていないから、そしてそんなことを考える余裕はないから、遅いんだろう、と決めてしまう。
そう考えたきっかけは自分が使っているパソコン、その上で動くメールソフト(Outlook Express と言います。この時点で、技術に詳しい方なら「自業自得だ」の一言で片付けてくれるでしょう)が絶不調になっていることだ。メールを読む、書く、送る、受け取る、一連の作業を行っていると、キーボードが反応しなくなることが起こる。メールに関わる一切のことが、何も操作できなくなる。そのうえメールの画面も表示されなくなる。何事かと思って各ソフトの状態を調べるとメールだけ「応答なし」と表示される。何も反応しません、だ。
そうやってパソコンが黙り込んでいる間、CPU(パソコンの頭脳の役割を果たすチップ)は必ず、100%で高速回転をしている。チップを冷やすためのファン(プロペラ)も、勢いよく回る音がする。つまりメールソフト上で何かをすごい速度で実行しているのだ。その何かが終わらないから、メールソフトは次の命令(キーボードの打ち込みとか)を受け付けられない。
何がこれを起こすのか、さすがに半導体の業界に3年いるとわかるようになる。無限ループというものに陥っているのだ。何かのはずみで、プログラム上のある部分を、何度も何度も繰り返し実行してしまい、他のことに移れない。パソコンは最高スピードで動いている。はたからみたらとんでもなく「遅い」ように見えるが、遅いのではなく次の動作へ移る方法を知らない、のが正解だ。
その状態から抜け出す方法はパソコンを買い換えたりメモリを増設したりして、「速く」することではない。繰り返しやっている無駄な作業を、やめてしまうことだ。ここではメールソフトをいったん閉じて、もう一度動かす。もしくはパソコンを再起動する。もしくはそのメールソフトを使うことをやめて別のもっとましなソフトを買う。なんだっていいのだが、今行っている無駄な作業を放棄する、のが手っ取り早い解決方法だ。しかし、そのまま動き出すのを待つ、という選択肢も実はある。ちょっと待てば動くことがわかっていれば、少しパソコンから離れて、また戻ればいいのだ。なにがどうなっているかわかりさえすれば、ストレスは少なく、結果的には作業が進む。
で、それが自分にも当てはまるのだ、と考えた。何か先へ進めないときはいつだって、何かに気をとられているはずだ。そして、その気をとられている対象について、同じことをぐるぐるぐるぐると考え続けているか、とらわれているから何も他のことができなくなってしまう。これなら理解できる。本当に遅いだけなら、時間はかかるけど疲れることはない。だが、たいていの場合何も考えられない状態とは、すごく疲れやすい状態でもある。明らかに、脳は回転しているのだ。多分、無駄に。
問題は気をとられていることそのものではなく、何に気をとられているかわかっていないことだ。あるいは、気をとられていることにすら気がついていないことだ。からくりがわかってさえしまえば、そのまま待つことも、気分を変えることも、電源オフ(寝る)だってできる。やりようがある、とわかれば気分も楽になってそれが結果的には無限ループから脱出するきっかけにもなる。
気をとられているものの正体はすぐにわかるものではないけれど、こうして考えることで気は楽になる。
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